チームの結束力はどのように向上するのか

日記

アンニョンハシムニカ。
朝大ラグビー部監督の呉衡基です。

チームスポーツを行う上で、チームワーク、結束力が重要だということは全員の共通的な認識であると思います。人数の少ない朝大ラグビー部も、この結束力を大きな武器にして戦おうとしています。

今シーズンの振り返り最後として、チームの結束がどのように起こったのかについて、少しだけ書きます。

まず、集団のまとまりを表す概念として、集団凝集性というものがあります。詳しく書くと長くなりますが、「メンバーが集団にとどまるよう作用する力の総量」とか言われます。ただ、スポーツ集団のまとまりの強さを表す際に、「仲が良いからこのチームにいたい」という次元だけでは結束力の強さを測りきれない側面があります。もちろん「仲が良いから」という力は結束力を予測する重要な要素ではありますが。

そこで、Carronという研究者らによって、「目標を遂行するため、もしくはメンバーの情緒的満足を満たすために集団が結合し、団結を維持する傾向に影響をうけるダイナミックな過程」と定義されたスポーツ集団における集団凝集性の概念を採用しながら話を進めます。

言葉が難しいですが、図にすればこんな感じです。

Carron(1982)の集団凝集性モデル

課題に対する魅力と社会に対する魅力という次元と、個人から見た魅力と集団の結合度合いという2つの次元を見る必要があるということです。

難しい話はこれくらいで、今季朝大ラグビー部は春、夏、冬と3回に渡ってこの集団凝集性を測定しました。

朝大ラグビー部(2021)の集団凝集性の変化

プレシーズンの春には平均値6.95でした。面白かったのは、社会的魅力の点で、個人は社会的魅力(私はチームメンバーと仲が良い)を感じている(7.63)が、集団の結合度への認知(我々は仲が良い)では全体平均を下回る結果であったということです。まあ、質問項目に「われわれのチームは、チームメンバー同士でパーティ(飲み会・食事会など)をよくひらく」というのがあり、コロナ禍で禁じたのでその影響が無いわけではありませんが。

そして、シーズン前の夏には平均値6.97と平均値にほとんど変化はありませんが、課題的側面に対する集団の結合度(我々は課題克服?目標達成?のために団結している)が下降(6.78→6.48)しています。それがシーズン終了後には7.09に向上、シーズン後には平均値でも7.42と全ての因子で向上傾向が見られました。

ぶっちゃけ、今回使用した集団凝集性尺度は、織田ら(2007)が既に指摘しているように、日本の文化的背景を考慮して作成されていないものなので、我々にも当てはまらないものがあります。なので、もしかすると数字にあんまり意味はないかもです。とりあえずの基準が欲しかったので今季は測定してみました。

私が今回言いたいし、学生らにも常に伝えようとしているのは、「良くなるためには一度悪くなる(かもしれない)」ということと、「今の状態を維持しようという力が何かを変えようという動きを止め」てしまいかねないということです。

前にも書きましたが、安定してはダメです。何かを成したとしても、それを変える勇気が必要です。上手くいっている形があったとしても、それを常にプラッシュアップさせていくことが重要で、そう出来る人になって欲しい。

安定しているところにいれば安全だし、楽です。でもそこからの前進はない。気づいたら時代も、周りも前進していて取り残されるだけです。

私は円陣の綺麗さにうるさいです。でも本当に汚い時は良い試合しないから面白い。

チームの結束力はどのように向上していくのか、多分ずっと良い状態なんてあり得ないんだと思っています。悩んだり、喧嘩したり、嫌な気持ちになったり、怒られたり、

良いと思っている状態は無自覚的無能の状態なのかも知れません。万能で完成されている状態なんてなく、常に向上心を持ち続けることが重要です。

そして駄目な点を自覚した時に一歩踏み出せる勇気を持てるか、努力をしていたら馬鹿にされないか、自分の弱いところを見せるのは不安、できていないことを指摘して嫌われたらどうしよう、そんな恐怖と向き合えるか。

チームとしては、その恐怖が現実であってはならないことが重要です。努力をしても馬鹿にしないし、弱いところを見せても馬鹿にされない、指摘されても受け入れられる、これがチームとして成長できる安全な環境。安全な環境を作ることでチームを成長させられる。自分の立場を守るために人を馬鹿にしたり、否定するのは最も愚かな行為。もっともっと安全で成長できる環境を作れるように努力を続けます。

今年のチームは、成長しようと必死でもがいたのだと思います。なので一度悪くなった。でも元に戻すのではなく成長を続けた。「悪くなるかも」という恐怖(ここでは実際に悪くなった)を乗り越えて成長を続けられた。悪くなっても、良くするためには本当にこれが必要だと信念を持って取り組んだ。そしてこれが本当に必要なのかの根拠はあるのか、常に考え、もがき、葛藤したから成長できたのだと思います。

私は、「こうしたら良い」とは教えません。今までそう教わってきた子たちが多いから最初は辛いと思う。でも自分たちで考えて、もがいて、葛藤して出した「答え」を信じて挑戦することで成長する。それで失敗しても。

今シーズン、結果はついてきませんでした。
ですが、試合結果には見えないドラマがあり、成長がありました。

スポーツですので普段は結果しか届けることが出来ません。
ですが、その過程で選手たちの、またチームの成長があり、ドラマがあったことをお伝えしたく、拙い文章ではありますが、シーズンの総括として投稿させていただきました。

もう一つだけ書き残しておきたい今年のストーリーがあるので、それもいつか投稿します。

今後とも朝大ラグビー部へ惜しみない幇助と応援をいただけましたら幸甚に存じます。
引き続き朝大ラグビー部をよろしくお願いいたします。

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