グラウンドに立てない者の想いを背負って

日記

2部残留に向け、今季初勝利~ 

朝鮮大学校32-19国士舘大学 

今季未勝利同士の最終戦。負けた方が最下位となる「絶対負けられない試合」に、リザーブ1人の16人で挑むチームにオヒョンギ監督が熱く語りかけました。 

「やってきたことに自信を持って、互いを信じ自分の力を信じよう。 

朝大生、朝大ラガーマンのプライドを持って戦おう。グラウンドに立ちたくても立てない部員たちがいる。グラウンドに立つ者はその想いと責任を担って戦おう」。 

万感の思いをこめて気合を入れる16人に、身体が万全な者は一人もいません。交代なしのフル出場を続けてきた選手たちの疲労と痛みを、私は想像することさえ出来ません。 

ちょうど目の前を通ったWTBムンミョンイル(経営学部1年・大阪朝高出身)の右足のほとんどを覆ったテーピングが痛々しく、「頑張れ」と声をかけた時です。隣にいたチョンソニマネージャーが笑顔で話してくれました。 

「ミョンイル、今日めっちゃ緊張してるんですよ」。 

緊張?ずっと試合に出ているのに? 

「今日が初めてのホームなんです」。 

初めてのホーム。朝大での公式戦はこの日で2度目、一回目は2か月以上前の中央大戦。その試合、彼はリザーブで出場しなかったんだ… この2か月、厳しさの一途を辿ったチーム状態をあらためて思い知りながら、それ以上に、試合に出続けることによってもまれ、たくましく成長したミョンイルから、半年前に入学した1年生の面影がとっくに消えていることを気づかされました。 

応援席に座る学父母に、そして大学の友人たちに自身の雄姿を見せる「朝大デビュー」! 

マネージャーの言葉を否定することもなく、照れたような笑みを浮かべるその表情は、でもやはり初々しい1年生のそれでした。 

おそらく痛み止めを飲んでの出場だったそのミョンイルが、10-14と逆転された直後の前半30分、見事なランで大きくゲインしたリスンジン(経営学部3年・東京朝高出身)からのラストパスをもらい右サイドを疾走、相手を振り切りインゴールからセンターに回り込んでの再逆転のトライを決めたのです。 

素晴らしい「朝大デビュー」となったトライから得たコンバージョンキックを決めたのがキムギョンセン主将です。 

この日彼は、2本のペナルティゴールと4本中3本のコンバージョンキックを成功させ勝利に大きく貢献してくれました。 

試合の二日前の25日にアップされた主将のインタビュー記事で、書きそびれたことがあります。練習まで2時間以上あったので今から何をするのかという問いに、一人でボールを蹴ると答えたのです。 

「普段はポールがないので、ポールをイメージしてキックの練習をするしかないんです」。 

キッカーである彼は、様々なハンディを背負うチームの中で、自分だけが背負うハンディとも戦っていたのです。 

私の知る限り2部の全ての大学は専用のグラウンドを持っていて、当然ポールはいつも立っています。 

朝大グラウンドはサッカー部と共用で、リニューアルされた今季、初めてラグビーのラインを引いてもらえましたが、サッカーの試合も頻繁に行われるため、ラグビーの試合前に部員が設置、試合後に撤去ということになっています。勝敗を左右するキックを担当する者には大きなハンディでしょう。あるべきポールの位置と高さを頭に思い浮かべて黙々とボールを蹴る主将の努力は、今季極めて高いキック成功率となって傷だらけのチームを力強く鼓舞し引っ張ってくれました。 

(昨年、リーグワンの関係者が試合後のポール撤去作業を見て驚いていました。控え部員がいないので、たった今ハードな試合を戦ったばかりの選手たちが、肩車をしてポールを下ろしていたからです。) 

私が知りえるラグビー部員の努力、悩み、葛藤、痛み、疲労など、本当に氷山の一角、宇宙の塵程度と自覚しています。 

彼らの血の滲む想いと献身的な戦いを、もっと多くの人々に知らしめる力がないことも。 

ウリ朝大フィフティーンはしかし、学父母と同胞たち、学友たちの応援を魂でしっかり受け取り、感謝と誇りをミックスさせて前進します。今季はそれに、グラウンドに立てない者の想いが加わって12月11日の入れ替え戦に臨みます。 

「俺たちが来年の2部のステージを準備する。その後は一緒に1部を目指すんやで!」(by荒ぶる№8キムチソン)

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