朝鮮大学校24―75中央大学(前半12-35)
15人揃わず棄権した開幕戦から1週間、ホームでの今季初戦はリザーブ一人の総勢16人で、今季初めて2部に降格した名門・中央大に挑むことに。
実績、戦力(部員数)の差に今季初戦という緊張感までが加わって、不安と重苦しさに包まれていた・・・のはいつものように私だけでした。「開き直ってます。いっちょやってやろうと。はっはっは」と爽やかに話してくれたCTBキムグァンウの弾けるような笑顔と言葉は、紛うことなき全部員の姿と想いだったでしょう。
試合直前の円陣でのオヒョンギ監督の第一声が「待ちに待った試合だな。」でした。「最高のグラウンド、最高の相手。朝大のプライドを持って、どんなにしんどくても相手がいやがることをしよう。相手がいても前に前に出よう!」
雄叫びをあげグラウンドに散る選手たちがいつにもまして誇らしく、目頭が熱くなるほどにかっこいい!
点差ほどの完敗ではない、というと負け惜しみと言われるでしょうか。潔くないと。
監督は潔く認めています。「やってきたことは勝ってる。やってこなかったことで負けている」。(ハーフタイムでの指示の中で)
「やってこなかったこと」はセットプレーで、それはしたくても「出来ないこと」なのです。スクラム、モールなどのセットプレーの練習には、単純に8人のフォワードが二組、つまり16人必要なわけです。負傷者なしで8人ギリギリの現状でとても無理な話です。
そのセットプレーで完敗でした。どれほどの完敗かというと、奪われたトライ11本中、7本が朝大ペナルティ→タッチキック→ラインアウト→モールトライの「鉄板」パターン、1本がモールからのトライ、1本がスクラムトライ。
それを完敗と言うんだよと言われればそれはそうなのですが、「やってきたこと」、この夏ずーっと取り組んできた「新しい戦術」の素晴らしい実戦で、「格上」中央大のディフェンスを完全に崩して破ったバックスの4トライに、「充分通用する」という手応えを得たことが大きな収穫なのです。
交代のない後半、眼に見えて疲労の色が濃くなりスコアを離されていきます。ベンチ内では「○○、足つってる」「○○足首捻った」「○○限界だ」という言葉が飛び交いますが、だからと言って交代があるわけでもないのです。
正直、誰が見ても「よく頑張った」「大健闘」と称えられる試合だったと思います。手前味噌ではなく。
しかし、全くそうは思っていないのが選手たちなのですから、私はなおさら希望と誇りと、そして痛みに胸を焦がすことになるのです。
ハーフタイムに「格上にいい試合してる、ではあかんのや!」と檄を飛ばした№8キムチソンが、終了後クールダウンする仲間に声をあげました。労いでも励ましでもない強い口調で。
「同胞の前でこんな点差の試合見せたくないし・・・したらあかんのや!・・・」涙で声がつまり、さらに感情が高ぶります。
「人数少ない、疲れてる、そんな言い訳やめよう!なんであと少し、あと一歩を出来へんのや!」
わが胸に刺さる言葉でした。頑張ってる、でも条件は厳しい、何事にも限界はある。朝大ラグビー部だけでなく、ウリハッキョを含む同胞社会の数多の現場で、おそらく数多の人々が葛藤し省みながらも克服しえない呪縛のような自家撞着。
50点以上の差がついてなお、涙が出るほどに悔しかったチソンの想いは、必ずや皆で共有され実践されると信じています。
「同胞の前でこんな試合・・・」
朝大ラグビー部にしかないこのモチベーションがあるからこそ、いつも支援してくださる黄哲守氏の静かな激励が日が暮れかけたグラウンドに共鳴するのだと思います。
「トンムたちは、ウリ同胞の誇りです」。
試合の詳細、オヒョンギ監督とキムギョンセン主将のコメントなどを見明亨徳氏の記事で読むことが出来ます。