関西の雄、近畿大との招待試合、学父母の熱い想いに応えられたか

日記

(今回は特に長いです。)

626日、大阪朝高ラグビー部創設50周年記念行事(大阪朝高ラグビー部ОB会主催)に招待された朝鮮大学校ラグビー部が近畿大学と対戦しました。

前回ご紹介した通り、昨季関西大学Aリーグ2位で全国大学選手権に出場した強豪相手の17-45(前半12-12)というスコアに、「大健闘」「よく頑張った」という労いの言葉を数多くいただきましたが、この試合ほど数字だけでは決して伝わらないウリ朝大フィフティーンの素晴らしさ、強さが凝縮された試合もそうそうないのではないかという誇りと、だからこその悔しさが今も胸に満ちています。

誉めることの少ないリャンジョンテコーチが、「最高の試合をしている」と絶賛する試合の入りと序盤戦でした。

キックオフから敵陣になだれこみボールとスペースを確保し続けます。

開始5分の初スクラムを互角に組み合いゴールに迫り、3分後にはHОリミョンスのビッグキャリーで再びゴール目前に。

この日MOM級の働きをしたHOの李明樹

「いいラグビーをしている」。はるばる東京から駆けつけてくださった辰野さんの低く力強い一言がベンチの空気を心地よく引き締めてくれます。

そしてついに13分、ルーキーWTBムンミョンイルのビッグタックルを起点に、奪ったボールを繋ぎ、左スミに先制トライ!

リャンコーチが目を細めてウリ選手の良さを分析してくれます。「ボールへの執着心が素晴らしい。ミスをしても絶対相手に渡さないという気持ち、相手のボールを奪うんだという気持ちが全員にみなぎり見事に融合している」。

完全にゲームをコントロールしていると言える朝大は、28分、相手ゴール前ラインアウトからモールを組み、二つ目のトライを奪取します。キックも決まり12-0。このスコアも、近大が初トライをあげる36分まで、ずーっと相手陣内で試合を進めた朝大の戦いぶりも、どれほどの人が予想したでしょうか。当の朝大ラグビー部の監督、コーチ、選手を除いて。前日から「勝つために大阪に来たからな」と不敵な笑みを浮かべるオヒョンギ監督と、異口同音に「勝ちます」と決意表明する選手たち。「格上」の強豪相手に、気負いも迷いもない監督、コーチの優れたゲームプランと、それを力むことなく見事に実践して見せる選手たちのメンタルの強さとスキルの高さに、私はただただ感嘆し感心するばかりでした。

大怪我を乗り越えこの日が復帰戦のFB金洸樹。おかえり洸樹。

前半終了間際に二つ目のトライを奪われ12―12で折り返したハーフタイム、

たしかな手応えと、それを手に入れるためには避けようもなく蓄積されていく疲労を滲ませて活発に話し合う選手たちを、監督がこの言葉で送り出します。

「大阪と愛知の朝高生、そして大阪の学父母とトンポが見てるぞ」。

そうです。ここにこそこの試合の本質的な意義があるのです。

キッカーも務めた主将の金慶生。80分間高いパフォーマンスを発揮しました。

朝高ラガーマンの澄んだ瞳と心に、日頃見ることも接することもない朝大ラグビー部の姿と魅力がいかに映るのかは、朝大ラグビー部の明日に直結する極めて重要な問題だと言えるでしょう。そして、それ以上に大事だと私が思うのが、

朝大でラグビーに打ち込む選手たちの背中を強くあたたかく押してくださり、ラグビー部の運営に惜しみないご支援ご協力をくださりながら日頃その部活動もましてや試合もご覧になれない大阪の学父母に、「恩返し」となるプレーをお見せすること、学父母の皆様に「朝大に送ってよかった」「朝大でラグビーやってくれてよかった」と心から思っていただける試合をすること、でした。

私ごときが思う数十倍、数百倍を肝に銘じて練習を積んできた監督、コーチ、選手たちに新たな気合いがベンチにみなぎります。

しかし、です。想いと気合いだけで勝てるほど甘い世界ではないことは周知の事実。後半のキックオフ直前、私の心配をリャンコーチが天を指して代弁してくれました。「最大の敵はあれですね」。31度を超える灼熱のグラウンドに立つ選手たちを容赦なく照りつける太陽に、交代が限られるウリチームはどうしようもなく大きな影響を受けざるを得ないのです。当然のように後半から大量に選手を入れ替える近大。今まで出ていた選手と同じかそれ以上の力を持つ選手たちが次々に、それこそ颯爽とそれぞれのポジションに散って行く中、朝大は前半死力を尽くした15人が声を出し合い互いを奮い立たせます。

後半4分、相手ゴール前右サイドでペナルティを得た朝大。近い右タッチラインに蹴り出しマイボールラインアウトからモールを組むのが「定法」で、相手もそれを想定して右サイドに意識も人員も集中させていました。手薄になる逆の左サイド。そこに一人離れて立つFŁリスンジンからサインが。ボールはタッチに蹴り出されずに左に大きく展開され、リスンジンの突破を経てインゴールへ!均衡を破る後半の先制トライに私は心の底から感動しました。彼らに体力の限界はないのかと。直前の監督の檄をこうも見事に実践できるのかと。

FWが春シーズンずーっと自主的に取り組んでいるスクラム。どんどん良くなっています。

その7分後、同点トライを決めた近大の選手から大きな声が上がります。

「この試合、絶対に勝とうぜ!」 元々の地力、選手層の厚さで上回る近大が、意地とプライドをかけギアをどんどん上げてくると同時に、酷暑は交代のないウリ選手の体力を確実に奪っていきます。17-17の均衡を破られた後半25分過ぎから、あれほど機能していた組織的なディフェンスが綻び始め、互角もしくは優勢に押していたスクラムが押され始めます。もはや体力の限界をはるかに超えて気力だけで戦っているウリフィフティーンは立て続けにトライを奪われます。―

5-33という後半のスコアに、私は正直「選手がどれだけ頑張って、どれだけ素晴らしい出来でも、この人数この暑さでは仕方ないじゃないか。」と、悔しさと諦めを同時に嚙みしめてしまいます。その中にはラグビーそのものに何の力も与えられない悔しさが含めれています。でも、「仕方ないじゃないか」と思っているのは私だけ、というところにウリ朝大ラグビー部の真の力と希望が確固としてあるのです。

試合終了後、珍しくクールダウンする前の選手たちに監督が語りかけます。

「前半の100%が後半90%になり80%になる。その時に確実に相手にやられる。克服する方法は二つ。100%を最後まで続けるか、今の100%を120,140%にするか」。

殊更に厳しくもなく、優しくもなく、笑いもなく、当たり前のことのように淡々と。(そんなこと出来るのか)この思いも私だけのもののようです。

疲労と苦痛に顔を歪めながらも、選手たちは普通に受け止めて普通に答えます。

「イェ!」

敗戦と課題を受け入れながら、しかしウリ朝大ラグビー部はその魅力と可能性を、大阪の学父母たちと大阪、愛知朝高ラガーマンにお見せすることが出来たのではないかと自負しています。(私は何もしていないので、正確には選手たちを誇りに思っています。)

そして、それに勝るとも劣らない最大の収穫は、ラグビー部父母会の本当にありがたいご支援とご声援に直接触れて湧き出る感謝の想い、学父母の朝大、ラグビー部への熱い熱い愛情と期待を、胸々に深く深く刻めたことだと思っています。

OBでクボタスピアーズ船橋・東京ベイで活躍する金秀隆選手が試合後選手を激励してくれました。

父母会と大阪朝高ラグビー部ОB会が設けてくださった前日の豪勢な食事会、炎天下の応援とお心遣いが嬉しい昼食の差し入れ。そして試合後の焼肉会で朝大校歌を熱唱する選手たちへの力強い声援は涙が出るほどにありがたかったです。

大阪民族教育の厳しい現状を全く知らないわけではない者として、中、高、大の学生、卒業生、学父母が同じ一つのテーマで語り合い喜び合い盛り上がり、そして繋がり合えるラグビー、スポーツの持つ力を深く実感できた素晴らしく、貴重な一日でした。もちろん朝大ラグビー部にとって、計り知れない大きな財産を手にしさらに強くなる今後を約束した日でもあります。

父母会の皆様、大阪朝高ラグビー部ОB会の皆様、近畿大学ラグビー部の皆様、本当に、本当にコマッスンミダ!

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